涙に逢うまでさようなら

ノートを一ページ汚したところで机に伏せた。

大翔はまだせっせとシャーペンを走らせている。

携帯で時間を確認した。

勉強開始から三十分ほどしか経っていなかった。

思ったより自分が文字を書くのが速かったことを喜ぶべきか。

ため息をつくと、大翔が「飽きた?」と声を掛けてきた。

優しいその声に顔を上げると、彼は口元に微かな笑みを浮かべたままノートを汚していた。

「よく飽きないね」

わたしはそう言うと、トートバッグの内ポケットから清涼菓子を取り出した。

容器を振って手のひらに転がってきた五粒ほどを全て口に放り、噛み砕く。

清涼感というよりも痛みに近いそれが、苛立ちに似た感情を少しやわらげた。

やがて清涼菓子を飲み込むと、もう一度ため息をついた。