涙に逢うまでさようなら

パーカーのフードをかぶり、トートバッグを手に家を出た。

百円ショップでノートを買うためだ。

金は、昨夜父親の財布から二万頂戴した。


買い物を済ませてから向かうと、ちょうどいい時間に相原家の前に着いた。

こぼれた液体に群がる蟻を眺めていると、玄関のドアが開く音がした。

直後、「美紗。いたんだ」と大翔の声が聞こえる。

振り向いた先の彼は、浅葱色のショルダーバッグを下げていた。

「どこかへ行くのか」と問うと、「図書館へ行くんだ」と返ってきた。

「図書館?」

「うん。図書館だと、時間を気にせず勉強ができると思って。公園の近くにあるんだ」

「ふうん……」

大翔はわたしに歩けるかと問うたあと、「行こうか」と言った。


図書館は公園の入り口を過ぎてしばらく歩いたところにあった。

幼い頃、兄に連れられて訪れたことがあるような気がする。


館内は、この時代には珍しく冷房がきいていた。

七月下旬、夏休みなのか、小学生くらいと思しき子供の集団がいくつか目に入った。


大翔と二人、奥にある席に着いた。

即座に勉強道具を並べ始める大翔にもう始めるのかと思いつつ、パーカーのフードを脱ぎ、彼の差し出すノートと公民の教科書を受け取った。