涙に逢うまでさようなら

勉強は、大翔の筆記用具とノート、教科書を借りて進めている。

彼の勉強を応援するだけのつもりでここを訪れたわたしは、筆記用具もノートも持っていなかった。

筆記用具と教科書を貸してくれたのはわかるが、ノートを貸してくれたあたりに嫌なものを感じた。

どれだけ計画的なのだろうと思った。


「ああ……。飽きた」

わたしはシャーペンをノートの間に放り、ノートと教科書が並んだ折りたたみ式のミニテーブルに伏せた。


ミニテーブルは大翔が幼い頃に使っていたものらしく、

小さな子供が好みそうなキャラクターのシールが、向きもばらばらに大量に貼られていた。


「つうか、大翔。試験っていつの受けんの?」

「いやあ? いつでもいいよ。同じ日に受けるでしょ?」

「ああ、はあ……」

なんでわたしも受ける設定で話が進んでるんだよと心の中で愚痴を漏らす。

「お互いの勉強の進み具合を見て、じゃないかな」

「ああ……。で? その年度で十六歳以上になる高等学校を卒業していない者というのが高認の受験資格らしいけど、

今年は試験あるの? 勉強が進めば、それに受かればいいんでしょ?」

「年に二回あるらしくて、今年は八月だか九月と、十一月……だったかな」

「八月か九月って、与えられる勉強時間結構変わるんだけど」

大翔はノートにシャーペンを走らせたまま、ごめんごめんと笑った。

「ちょっと、記憶が曖昧で」

「記憶が曖昧な人間が勉強して身に付くの?」

「まあまあ、ねえ。高認の合格ラインは百点満点中四十点くらいらしいし」

「いや大翔、四十点って四割合ってなきゃ取れないんだぜ? 普通に学校で勉強してた当時小学生のわたし、テストの平均点数七十点から八十点だからね。

それから勉強をしなくなって早三年ちょい。今の学力はきっと、現役の小学校六年生未満よ」

大翔は苦笑し、シャーペンを置いた。

こちらを向く。

「美紗、悲観的すぎ」

「さあどうかね。大翔が楽観的すぎなだけに感じるけど」

わたしは言いながら肩をすくめた。