涙に逢うまでさようなら

「わたしも、朝は主に母親、兄と話した翌日は父親が部屋にきた。

兄とは、帰宅が重なったときに玄関の前で話してた。やはり、『妹がそんなだと恥ずかしい』んだと。

それになにか言葉を返せば、彼は盛った情報を両親に流す。

兄が嘘をつく人間だとは考えていない両親は激怒し、次の朝、わたしの部屋には藤城家のラスボス的存在である父親が現れるというわけ」

めんどくさいよな、とほとんど無意識のうちに続けた。

「まあ、今は一切接触してこないからいいけどね。玄関の前で会っても鍵を閉められるほどに」

大翔は「えっ」と顔をしかめた。

「やっぱ、失礼かもしれないけど美紗んちの人たち頭おかしいよ。普通、玄関前で会って鍵閉める? 先に入るくらいはわかるけど、そこまでしなくない?」

わたしは「落ち着けよ」と笑った。

「奴らはそういう人間なんだよ。特別驚くこともなかったね。悲しくもならなかったし。

奴らの視界に、わたしはいないんだよ。ある種の現実逃避みたいな感じなのかね。

両親からすればこんな娘はいない、兄からすれば、こんな妹はいない、みたいなね」

「美紗は心が広すぎる。俺だったら、そんな家出てる」

「嘘ばっかり」

笑いながら言った。

「悲嘆に暮れ、挙句病むんじゃないの?」

「そんなに弱く見える? 俺」

「見える」と一言で返すと、「でも兄に負けたくない精神はすごいよ?」と返ってきた。

「そんなのわたしだってそうさ」と返すと、大翔は黙った。