涙に逢うまでさようなら

大翔がため息をついた。

「どうした?」

わたしが言うと、大翔は浅く座り直し、空を見上げた。

「なんか、外って意外と気楽な場所だね」

「ん?」

「ちょっと前まで外に出なかったって言ったけど、それはこの辺を歩いてると知ってる人いそうだなって思っての行動だったんだ。

でも冷静に考えれば、他の人は皆自分の行くべき場所に行ってるんだって思って。学校だったり、職場だったり」

「そうだよ。平日のど真っ昼間に普通の人がいるわけないんだよ。

まあ、創立記念日だったり週一とかで休み取ってる大人はわかんないけどね」

大翔は弱々しく、「怖いこと言わないでよお」と言った。

わたしはつい噴き出す。

「安心したまえ。わたしたちが同級生と最後に会ったのは三年以上も前のことだ。

わたしと同じように人付き合いを苦手とするあんたなら、どうせ他の人間と接することも必要最低限だったんだろう?

ほんの数回あんたと接した数少ない人間も、あんたのことなんか覚えていやしないよ」

「そっか、そうだよね」

俺も美紗みたいに夜まで外にいようかな、と大翔は呟いた。