涙に逢うまでさようなら

「そうだ。美紗は昨日、何時頃帰ったの?」

わたしは小さく笑った。

「昨日のうちから思ってたけどさ、あんた、人見知りなんだよね?」

「そうだよ?」

それがどうしたといった雰囲気をまとう彼の返答に苦笑する。

「絶対違うと思うんだけど。むしろ人懐っこいかと」

わたしは前を向いた。

遠くに小さな子供と、その親と思しき人物が見える。


「なんかねえ……美紗はいける」

「いけるってなんだよ」

再び大翔を見た。

「おっかねえな。ああで、昨日帰ったのだっけ? 夜の八時過ぎ」

「そうなんだ。ずっとここにいたの?」

「まあね」

「危なくない? 女の子一人で」

「時々出てくるけど、それは誰なの?」

わかんない、という大翔の言葉を聞きながら前を向いた。