涙に逢うまでさようなら

ベンチの並ぶ方へ向かう途中、昨日の大翔の言葉を思い出した。

明日も会えたらいいね、といった感じのものだった。

足を止め、ゆっくりもっていった手で二の腕をさする。

「……悪寒。おかんのやかんが沸騰したときでも寒気なんて感じないのに」

一人呟き、自分でふっと笑う。

寒さ倍増しちまったじゃねえかと思いながら歩みを再開した。


その日、一日中公園を歩いたが大翔に会うことはなかった。

嫌な寒さを感じ足を止めたあの時間が惜しい。