涙に逢うまでさようなら

翌日、目を覚ましたのは十二時半過ぎだった。


昨日、大翔とは十七時頃に別れた。

彼が帰ると言い出したためだ。

一人になってからは、音楽を聴きながら歩いて安全な帰宅時間を待った。


部屋着に紺色のパーカーを羽織り、家を出た。

玄関の鍵を閉め、家の鍵がついたネックストラップを首に掛ける。

昨日、ふとこのストラップの存在を思い出し、部屋中を探して見つけた。

ポケットの中でずっと握っているのは疲れるのだ。

もしも鍵を紛失すれば、二度と家に入ることはできない。

家族の帰りを待っていたところで、彼らがわたしを家に入れるとは思えない。

彼らの視界に、わたしは存在しないのだ。