涙に逢うまでさようなら

「そうだ」と言う大翔に、「本当によく喋るね」と返した。

「美紗は? ここにはいつもきてるの?」

「ああ、うん。中一の頃からの常連よ。ほぼ毎日きてる」

「そうなんだ。じゃあ、明日もくる?」

「うん。家は嫌いだからね」

「そっか……。中一の頃からきてたなら、俺ももっと早く外に出てたらもっと早くに美紗と逢えてたかもしれないね」

気持ちの悪いことを言うやつだと思いながらも、わたしは笑顔を見せた。

「そうね」

大翔は純粋な笑みを浮かべた。

ふうと短く息を吐き、空を見上げる。

「後悔だなあ。自分と全く同じような人がいるなら、もっと早く出逢いたかったよ。

そんな人以上に分かり合える人なんていないだろうからね」

わたしも空を見上げた。

「分かり合える人、か……。確かに、大翔みたいな人と会ったのは生まれてこの方初めてだ」

「やっぱり、誰も学校に行く意味なんて気にならないのかなあ?」

「どうだろうね。気になりはすると思うよ? 誰だって、一度くらいは。ただ、行かないって行動に移すところまでしちゃうのはわたしたちくらいなんじゃん?」

「そっかあ……。でも」

大翔はこちらを見て、

「もっと早く逢いたかったとも思うけど、結果として美紗に逢えた俺は幸せだね」と笑顔を続けた。

よくもまあいちいち気持ちの悪い言葉が思いつくなと思ったが、

わたしと同じような経歴を持つような変人なのだからこれくらいが普通なのかもしれないとも思った。