「すごいなあ……」

男は感心したように言うと、持っていたペットボトルの濃い茶を一口飲んだ。

はあと息をつく。

「まったくと言っていいほど同じ経歴を持つ人っているんだね」

男は体ごとこちらを向いた。

わたしは「なに?」と言いながら少し距離を置いた。

「俺、アイハラ ヒロトっていうんだけど、君はなんていうの?」

わたしはふっと笑った。

「人に名前を尋ねるときは自分から名乗れとか言いたかったけど――」

「名乗っちゃったね」とヒロトはわたしの言葉を遮った。

「わたしは、ふじしろ みさ。藤棚の藤、土に成長の成と書く城でふじしろ。美しいと、糸へんに少ないと書く字でみさ。藤城 美紗」

「へええ……」

かっこいいね、とヒロトは笑った。

「お褒めに与り光栄です。で、あなたの漢字は?」

「ああ……。えっと、相棒の相に原っぱの原であいはら、大きいに飛翔の翔でひろと。相原 大翔」

「ふうん……。そっちこそかっこいいじゃん」

ありがとう、と大翔は照れたように笑った。