男は一度、深く呼吸をした。

「そして、ここからが本題。学校へ行くことに対し疑問を抱いたのは、小学校四年生のとき。

他人と接することが面倒だと思うようになった俺は、他人しかいない、

他人との関わりという面倒からできた学校へ、なぜ行かなくてはならないのかと思った。

そう思ってすぐ、両親と当時高校一年生だった兄に学校へ行く理由を尋ねた。

兄は『自分で考えてごらん』と、両親は、『父さんや母さんも行っていた』とかなんとかと、曖昧な答えを返した。

とりあえず、行っていれば意味を見出せるかもしれないと思い、自分で考えてみろという兄の言葉を頭に、学校へ通い続けた。

しかし疑問を抱いたとき、俺はすでに小学校四年生。小学校生活はすぐに終わりを迎えた。

卒業式の練習が始まったその頃にも学校に通う意味は見出せず、そのまま小学校生活に別れを告げた。

そして疑問が解消されることがないまま春休みが明け、中学校生活が始まろうとした。

でも、こちらとしては学校へ行く意味がわからないまま。

俺は、中学校へは入学式と卒業式を含め一度も行かなかった。そのために高校へも行けず、ひきこもってた。

日中家を出るようになったのは、一昨日あたりからかな」

それで今日、君に逢ったんだ、と男は笑顔で締めくくった。