「いや俺、前から人付き合いが苦手でさ。
今こんなに話してるのも不思議なくらい本当は人見知りで、四歳だか五歳くらい……保育園か。
保育園の頃に、唯一の友達がいたんだよ。きいくんって当時呼んでたんだけど」
「うん」
きから始まるのであろうその名前はどんなものなのだろうと思いながら、
自分のものによく似た男の過去に相槌を打つ。
「その子とはもうほんっとに仲よくて、きいくんの方が中高一貫校に進んじゃったから小学校卒業と同時に離れちゃったんだけど、保育園で逢ってからそれまで一回しか喧嘩しなかった。
その一回っていうのが、保育園のときでさ。それがさっきも言った四歳だか五歳の頃だったんだけど、まあ年齢的にも、きっかけは本当に些細なものだったはずで。
もう覚えてもいないけど、どうせちょっとした意見の食い違いみたいな感じだったんだろうね。
それで、喧嘩っていうか言い合いっていうか――みたいになって。で、それって二人の問題じゃん」
「うん」
「二人の問題なんだから二人で解決すればいいじゃん」
「うん」
「なのにその子、わざわざ先生巻き込んでさ。まあいいんだけど、その子、先生には俺と話してたときと違うこと言うのよ。
結果、先生には十ゼロでこっちが悪いみたいに伝わり、俺が謝ったっていう。
いや、別に謝るのが嫌だったんじゃないんだけど。喧嘩だか言い合いになったのは、きっと互いに我が強いところもあったんだろうからさ。
ただ、先生の方にも事実を言ってほしかったなって。
まあ、その話が解決した直後から今まで通り接してたから、
その後特に気にすることはなかったんだけど、あれを機に人と接することを面倒だと思うようになったのは間違いない。
小学校に上がってからも、話すときにちょっと気を遣ってた部分もあったし」
今こんなに話してるのも不思議なくらい本当は人見知りで、四歳だか五歳くらい……保育園か。
保育園の頃に、唯一の友達がいたんだよ。きいくんって当時呼んでたんだけど」
「うん」
きから始まるのであろうその名前はどんなものなのだろうと思いながら、
自分のものによく似た男の過去に相槌を打つ。
「その子とはもうほんっとに仲よくて、きいくんの方が中高一貫校に進んじゃったから小学校卒業と同時に離れちゃったんだけど、保育園で逢ってからそれまで一回しか喧嘩しなかった。
その一回っていうのが、保育園のときでさ。それがさっきも言った四歳だか五歳の頃だったんだけど、まあ年齢的にも、きっかけは本当に些細なものだったはずで。
もう覚えてもいないけど、どうせちょっとした意見の食い違いみたいな感じだったんだろうね。
それで、喧嘩っていうか言い合いっていうか――みたいになって。で、それって二人の問題じゃん」
「うん」
「二人の問題なんだから二人で解決すればいいじゃん」
「うん」
「なのにその子、わざわざ先生巻き込んでさ。まあいいんだけど、その子、先生には俺と話してたときと違うこと言うのよ。
結果、先生には十ゼロでこっちが悪いみたいに伝わり、俺が謝ったっていう。
いや、別に謝るのが嫌だったんじゃないんだけど。喧嘩だか言い合いになったのは、きっと互いに我が強いところもあったんだろうからさ。
ただ、先生の方にも事実を言ってほしかったなって。
まあ、その話が解決した直後から今まで通り接してたから、
その後特に気にすることはなかったんだけど、あれを機に人と接することを面倒だと思うようになったのは間違いない。
小学校に上がってからも、話すときにちょっと気を遣ってた部分もあったし」



