「ええ……」

男は「まじかあ」と髪の毛を掻き乱した。

「まあ、嫌なら言わなくてもいいけど」

「えっ、本当?」

「わたしも言わないだけだから」

「操るの上手いなあ……」

心底残念そうに言う男に、初対面の女のことをそんなに知りたいかと思った。

「ちょっと待って」

男は数回深い呼吸を繰り返すと、「馬鹿げた話を聞く準備はできた?」と訊いてきた。

「……まあ」

どんな話であろうとまともに聞きやしないのだから準備もなにもあったものでないと思いながら返した。


「ものすっごくまとめちゃうと……ていうか、もう一言にしちゃうと、俺はただ、学校へ行く意味がわかんなかったの」

つい男を見た。

彼は困ったように笑っている。