涙に逢うまでさようなら

「君……年齢いくつ?」

「はあ?」

「いや……言いたくなければいいけど」

「別に。いくつに見える?」

男の顔を見ずに言った。

年齢を問うたときに返ってくる言葉で最も面倒なものだと知っている。

「ええ……? 正直に言っていい?」

「どうぞ」

男がいろいろな角度から見てくるのがわかる。

「うーん。十……八、十九辺り?」

「あら。そんなに老けて見える?」

「えっ、もっと正直に言っていい?」

「最初から正直に言ってくれていいと言ったでしょ」

「じゃあ……俺と同じくらい?」

わたしは肩をすくめた。

「と言われてもね。あなたの年齢を知らないから、なんとも」

ああ、と男は笑った。

「俺は十五。今年の……九月……に、十六」

妙な間を挟む男の言葉に、なんで自分の誕生日が曖昧なのよと笑う。

「今年で十六じゃあ……ご名答。わたしも十五。今年の十一月で十六」

「そうなんだあ」

男は嬉しそうに言った。

「えっ、なんでこんなところにいるの?」

男の問いに、わたしはふっと笑った。

「訊かなくてもわかってよ。学校に行ってないからしかないでしょ?」

「えっえっ、欠席? それとも、学校に通ってないの?」

「後者」

「へええ」

明るい声で納得する男に、「なんで嬉しそうなの」と小さく笑う。

「えっ、で、なんで行ってないの?」

わたしは再び笑った。

意地の悪いことをしてやろうと思った。

男の顔を見ると、彼は頭の上に疑問符を浮かべた。

「わたし、あなたから聞いたの年齢だけなんだけど。今回はあなたから教えてくれる?」