他人とはすれ違うくらいしかしない公園で他人と言葉を交わしたのは、週明けのことだった。


黒い半袖のプルオーバーに、他に持っていないという理由からジーンズという出で立ちで公園にきた。

清涼菓子のケースを手の上で振ると、三粒出てきて音が止んだ。

まじかよと心の中で呟き、残っていた三粒を口に放る。

五分ほど歩いた場所にコンビニがあることを思い出し、

そこで清涼菓子を買ってくるかとも思ったが、そのままベンチを目指して歩いた。

筒のようになっているポケットの中で右手に持っている音楽プレーヤーを操作し、音量を二つ上げる。


ふと、部屋に大きなスピーカーがあったら気持ちよさそうだなと思った。

スピーカーが欲しいとは、小学校の頃にも父親に言った。

しかし、「買ってやることはいくらでもできるけど、お父さん電気はわからないよ」と申し訳なさそうに言われた。

「医者様ってなんでも知ってるんじゃないの?」と言ってやると、「お父さんはだめな人なんだ」と返ってきた。

お前一人じゃなくて医者様全般の話をしてるんだけどと思ったのと、

だめな人が人様の命に関わる仕事をしてはだめだろうと思ったのを覚えている。