大翔とともに働くようになってから、確かに雑貨屋HEROの人気と知名度は上がった。

二号店の開店セールと同時に本店で開業五周年を記念した半額セールを行うと、本店と二号店へ、それぞれの地元の方が押し寄せた。

「お金返してくれた上に店長の座までくれるの?」と言うなっちが店長を務める二号店は、本店とは違い、本当に栄えた場所に建てた。

会社の財布に余裕があったからだ。

二号店の開店にも、十四人の力は借りた。

むしろ本店を立ち上げるときよりも借りたかもしれない。


レジ横の作業場で、大翔が女性に囲まれている。

「かわいいですねえ」と元気な女性の声が聞こえてくる。

「秋頃に並ぶ予定ですので、そのときはよろしくお願いします。発売前にはホームページの方も更新されると思いますので」

「もう首長ーくして待ってますう」

「よろしくお願いします」と返した大翔の声は、女性たちに圧倒されているようにも聞こえた。

程なくして「ありがとうございました」と言葉を並べた彼の声には、心なしか安心のようなものを感じられた。

女性たちが前を通る頃、わたしも「ありがとうございました」と頭を下げた。


頭を上げて視線を戻すと、大翔に見つかった。

困ったような笑みを浮かべられる。

目を合わせたまま、大人気じゃないかと念を送り、少し口角を上げてから商品の陳列作業へ戻った。

大翔がデザインから製作までを手掛けた、わたしも着用しているさくらんぼの耳飾りを陳列台へ並べる。

そのさくらんぼの耳飾りには、揺れる方にも揺れない方にも、大きいものと小さいものがある。


陳列台は、最後の増築と同時に購入した。

なっちと作ったダンボールの机は現在、休憩室で活躍している。