涙に逢うまでさようなら

「そうだ大翔、就職って決まった?」

言いながら大翔から離れる。

彼からは、「全然だめ」と返ってきた。

「美紗の方は? 雑貨屋さん、どう?」

「こっちはすっごい好調。このピアス、全部今月から発売なの」

揺れる桜のピアスと、桃色や緑色のピアスを見せようと首を左右に動かすと、「すごい数だね」と大翔は苦笑した。

「この右耳の上のやつ、アウターコンクって言うらしいんだけど、これが超絶痛かった」

よく頑張った、と言う大翔に、どっちがだよと笑い返す。

「……大翔、決まらなかったか」

「美紗がそんなしっとりしないでよ、事の重大さに気づく」

「でも……」と呟き、彼を助ける方法はないかと思考を巡らせると、少し前の自分の行動を思い出した。


「大翔っ」

彼の両腕を掴むと、落ち着けとでも言うような声で「なに?」と返ってきた。

「大翔さ、うちで働きなよ。すでに結構な数のスタッフさんがいて勢いついてるから、ここから失敗するとは思えないの。

なんなら今、二号店開業するか考えてるところでね。そうだよ大翔、うちに来るがいい」

左手首を見せながら「大翔は手先も器用だし」と続け、さらに色っぽい女性をイメージした声音で「お顔も素敵だし?」と続けた。

「絶対うちで大活躍だよ。仕事探しながらでもいいからさ」

「……でも美紗、中卒さん助けるんでしょ?」

わたしは舌を打ちながら立てた人差し指を動かした。

「中卒さんはもちろんだけど、なにより『この時代を生きにくいと感じている人』を救いたいのだと言ったよね?」

君は今幸せかいと尋ねると、大翔は目を逸らした。

「はい、明日からうちの正社員ね」と背中を叩き、「社長直々のスカウトだ」と続けた。