涙に逢うまでさようなら

大翔に訊くと、式は十三時頃に終わるとのことだった。

それに合わせて彼の大学付近を訪れた。

部外者が歩いていてもおかしくない辺りをうろうろしていると、道路を挟んだ先で立ち止まる袴姿の男を見つけた。

離れていてよくわからないが、相手もこちらも見ているようだ。

相手の人物の確認のため、わたしは前髪を掻き揚げた。

道路の向かい側にいる男が大翔であれば、これでわかるはずだ。

五年間ともに過ごしていて一度も顔を見たことがないとあれほど騒いでいた大翔ならば。

少しして、相手からこちらへ寄ってきた。

「美紗。来てくれたんだ」

懐かしい声を聞くと、視界が滲んだ。

年を取ると涙腺が緩くなるとかならないとか聞くが、こういうことなのだろうか。

「大翔っ、おめでとう」

よく頑張った、と彼に抱きついた。

「ありがとう。でもなんか、なにもないまま再会しちゃったね」

「大馬鹿者め」

声を作る余裕もなく、地声で言って顔を上げた。

「わたし泣いてるもん。涙に逢うまで、だったでしょ? わたし涙に逢ったもん」

自分の顔を指で示すと、「なんで美紗が泣いてるの」と笑い混じりに返ってきた。

「わたしの今日の夜ご飯は赤飯だよ」

「だからなんで美紗が食べるの。俺も食べる気ないのに」

六年前のような言葉に、わたしはふふっと笑った。