涙に逢うまでさようなら

少しの沈黙のあと、「あのう……」とみいぽんさんが手を上げた。

「はいみいぽん」となっちが名前を呼ぶ。

「どうせ厚めの木を使うようなので、その季節をイメージさせるもの、例えば花なんかを彫るというのはいかがでしょうか?」

雑貨屋の名前を訊かれ、雑貨屋のあと、アルファベット大文字でヒーローですと返す。

「『雑貨屋HERO』と真ん中に書き、四角に季節に合ったなにかものを彫るのです。

先ほど例に花を上げましたので、春なら桜、梅雨ならあじさい、夏ならひまわり、秋ならコスモス……といった感じで」

「なるほどねえ……」

頷いたあと、ちいたんさんは「冬の花ってなにかある?」と言った。

「他の季節もだけど、たくさんあるよ。見る機会の多いものだと、パンジーやビオラが十月から五月頃までの花」

「あのう……」

わたしが手を上げると、みいぽんさんはこちらへ視線を向けた。

「パンジーとビオラの違いってなんですか?」

「ほとんど違いはないのですが、園芸に詳しい方は、花が大きいものをパンジー、小さいものをビオラと呼ぶそうです。

また、パンジーとビオラの中間程度の大きさのものはパノラと呼ばれるそうですよ」

「へええ……。勉強になります」

会釈すると、「いろいろな呼び方があるとわからなくなりますよね」と優しい声が返ってきた。