涙に逢うまでさようなら

「これ絶対天板載せる前に貼った方がよかったやつ」などとこぼしながらも手早くシートを貼っていくと、なっちは「やっぱりみさっちは器用だねえ」と小さく拍手した。

「あのハムスターのコースターもすごかったし」

「まあ、最終的にチーズケーキの上でひまわりの種を持ったハムスターの絵になっちゃったけどね」

わたしは作業を続けながら言った。

「あれはあれでかわいいよ。そもそもエメンタールチーズを刺繍しろとか言う方が間違ってたんだよ」

「ただあれ、やたら売れてしまいそうで怖い」

はさみ、と手を伸ばすと、すぐにそれが届いた。

「なんで売れるのが嫌なの?」

「また縫わなくてはならないじゃないか。手作りというだけで毎度同じものなど作れないのに、あんな凝ったデザインのコースターをいくつも作れだなんてもう、なんてこったって感じだよ」

感情がこもっているのかそうでないのかといった声で言葉を並べると、「あんな凝った、なんてこった」となっちは繰り返した。

切り取ったシートを「あげる」と渡すついでに顔を見ると、彼女は少し嬉しそうに笑っていた。

「あたし、だじゃれ好きなの」

「おやおや。変わった人もいるものだね」

「お父さんの言うだじゃれしか面白くないって思ってたんだけど、お父さんと同じくらい面白い」

嬉しそうに語るなっちに「お父さんおいくつ?」と問うと、「五十五歳」と返ってきた。

自分の脳は五十五歳の男性と同じようなことを考えるのか、と複雑な気持ちになった。