涙に逢うまでさようなら

わたしはなっちが戻したスイートベースの白い容器を手に取った。

中身に先ほど嗅いだ二つとの違いはなかった。

容器からそのまま匂いを嗅ぐと、静子さんは「よかったら」と洒落た黒いバッグからおしぼりを取り出した。

ファミリーレストランなどに置いてある、袋に入っているものだ。

「ありがとうございます、なにからなにまですみません」とそれを受け取り、両方の手首を拭いた。

「そのね、遠回しに試着みたいなのを強いる辺り静子だよね」

言いながら、なっちは静子さんへ右手を伸ばした。

「そう言うセブンこそ、おしぼり寄越せオーラがメラメラ出ちゃってますけど」

「うるさいなあ。出ちゃってんじゃないし、敢えて出してんだし。なに出ちゃってるとか言ってんのよ?」

「ああそうですか。そんなに欲しけりゃくれてやるよ、持ってけ泥棒っ」

静子さんは言いながら、一枚のおしぼりを名刺のように両手で差し出した。

「お気づかいいただきありがとうごさいます。せっかくですからありがたく頂戴いたします」

「ぜひとも大切にお使いくださいませ」

いやに柔らかい口調で言うなっちに、静子さんはぜひを強調して返した。

二人のやり取りを見ながら、不思議な人たちだと思った。