涙に逢うまでさようなら

慣れない動物の絵だ、まずは下書きの練習をしなくてはと思いながら作業を再開すると、「セブン、みさっちょ」と繰り返しながら女性が走ってきた。

「セブン、みさっちょ。できたよ」

「うるさい静子じゃん。どうしたの?」

「お黙り、セブン」

「静子さん、どうしたんですか?」

わたしが本題を促すと、静子さんは作業台として使っているところに筒状の紙を二本置いた。

「リレーでもやるんですか?」

「どうつっこんでほしいのかな? リレーなんかやってどうするのよ。できたの、レシピが」

「レシピって、香りものの?」

なっちの言葉に、静子さんは「そう」と一言で頷いた。

「わたしの手書きなんで読みにくいところもあるかもしれないけど、そこはご了承くださいませ。一応カラーコピーだからましだと思うけど」

わたしは一本の紙を取り、それをなっちへ渡した。

残った一本をまとめる輪ゴムを外し、紙を広げる。

紙は全部で五枚あった。

「紙は上から順に、フルーツ系、ハーブ系、シャボン系、フローラル系、スイート系のレシピね。

フルーツ系の香水もハーブ系の香水も、シャボン系の香水も、フローラル系の香水もスイート系の香水も。よく見かけるでしょ?」

なっちの「うん」という声のあと、「そうですね」と返した。

「そこで。わたしはそれらにいろいろな香料を混ぜてみたの」

これらがその試作品、と静子さんは色の異なる小さな容器を五つ並べた。

「こんなに?」と言うなっちに、静子さんは「ぜひあなた方の意見を聞きたい」と返した。

「こっち側から順に、シャボンベース、ハーブベース、フルーツベース、フローラルベース、スイートベースね」

「別にそのままの匂いでよかったんじゃないの?」

「セブン。君はお馬鹿なのかい? ありふれた香りを売ってもウケないでしょう。ウケなければ制作費用が無駄になる。つまり、みさっちょ社長が損をするのよ」

力強く語る静子さんに、「いろいろと考えていただいてありがとうございます」と軽く頭を下げる。