涙に逢うまでさようなら

翌日、なっちと二人で小物の制作をしていた。

未だ大の得意とは言えない刺繍と闘いながら、なっちのデザインした花火模様のコースターを作っている。


「みさっち、こういうの作れる?」

「刺繍で?」

「刺繍で」

瞬時に返された言葉に、「刺繍でか」と呟く。

「どんな?」

手を止めて顔を上げると、「こんな」と紙を渡された。

ショートケーキのような形のものに丸い物体が乗った絵が描かれている。

ショートケーキのようなものから伸びた線の先には、エメンタールチーズと、

その上に乗っている丸い物体から伸びた線の先には、ひまわりの種を持ったハムスターと書かれていた。

「なっちって毎度ハイレベルなお願いしてくるよね」

「無理?」

申し訳なさそうな声に「そう言われたら無理じゃないって言っちゃう」と返す。

「で、このエメンタールチーズとはなんぞや? チーズなのにスースーするの?」

「スースーするのはメントール。今回のチーズの名前はエメンタール。チーズといえばって感じの、穴が開いてるやつ」

「ふうん……」

紛らわしい名前をしていやがるなと思いながら頷く。

「ハムスターの種類は? 定番のオレンジっぽい色の子?」

「グレーの子と白い子、あとはそのオレンジっぽい子を作ってほしいかな」

「白いハムスターもいるんだ?」

「うん。スノーホワイトジャンガリアン……みたいな名前だったはず。あたしが言ってるグレーの子は、ブルーサファイアっていうジャンガリアンハムスターのこと。これは確実」

なっちのイラストを見ながら彼女の方へ手を伸ばして指を動かすと、「ああ、はいはい」とマジックが手に載せられた。

「スノーホワイトジャンガリアンと、ブルーサファイアジャンガリアンね……」

言いながら、紙に二つの名前を書いた。

なぜ茶色のマジックを寄越した、と言いたくなったが、おとなしく礼を言ってマジックを返した。