涙に逢うまでさようなら

「ちょっとミント、なにしてるの」

ふと、なっちが叱るような声を上げた。

わたしを含め、皆の視線がそちらへ向く。

「いやあ……肉球ってかわいいじゃん? うち彫刻得意だし、作っちゃえと思って」

「誰がいつキーホルダーの肉球シリーズを作れと言った」

「うちが、ちょっと前に」

「ミントが言うものじゃなくてあたしやみさっちの言うものを作ってよ。配ったイラストに仕事させろや」

「社長さんは誰だっけ?」と言うミントさんに、重い肩書だなと思いつつ「わたしです」と手を上げる。

ミントさんは一番右の席を立ち、キーホルダーを持ってこちらへ来た。

「かわいくないですか? タロくん見てたら作りたくなっちゃって……」

ミントさんについてきたタロくんは、彼女の足元で元気に尻尾を振っている。

わたしは差し出された三つの木製のキーホルダーを受け取り、内容を確認した。

それぞれ、縦向きの長方形の木に肉球が彫られたもの、

横向きの長方形の木に肉球と大文字のハッピー、感嘆符が彫られたもの、

肉球がそのまま形になったものだった。

「素敵です、肉球キーホルダー。これは……短い棒で上と下が離れてるんですね? すごいです」

わたしが言うと、「なあえも藤城社長がオーケーしちゃあ、なにも言えないね?」としいさんが言った。

なっちは目元を覆うと同時にため息をつく。

「みさっちがいいなら構わないけど……。ミント、あまりワンちゃんワンちゃんさせないでよ?」

なっちが渋々オーケーを出すと、ミントは「はあい」と返事をし、キーホルダーを持って席に戻っていった。