「お前は雄輔の言うとおり、勉強の大切さを知らないんだ」

だったらなんだよ、と心の中で呟く。

「お前、大学を卒業する年齢になったらどうするんだ?」

「なんで大学まで出る設定なんだよ」

本音が小さく漏れた。

無意識のうちだった。


「この時代、大学を出ずに就職が決まると思っているのか? 学歴があっても収入が少ないという話も聞くくらいだ」

わたしはふっと笑い、「じゃあ」と続けた。

「高学歴で低収入って話を聞くなら――」

目元を覆っていた腕をおろし、顔を父親の方へ向ける。

「低学歴で高収入って話も後に出てくるんじゃないか?」

わたしが言うと、父親は「なにを馬鹿なことを言っているんだ」と怒鳴った。

「お前はいつもそうだ。ああ言えばこう言う、引き出しの中には言い訳が常備されている。言い訳をする前に行動を起こせ」

わたしが舌打ちをすると、父親は肩をすくめてふっと笑った。

「仕事へ行ってくる」という言葉のあと、静かにドアが閉められた。

唇を強く噛み、右脚を立てて太ももを拳で叩く。

太もものいつも叩くところには、自分の拳と同じくらいの大きさの濃い痣ができていた。