「時間?」

「そろそろ、かな」

「そうか」

頷くと、急に寂しくなった。

大翔に合わせるように立ち上がる。


「なんか、今までありがとね」

優しい笑顔で放たれた言葉に、なんとか笑顔を作って首を振る。

「あのさ」と言うと、「ん?」と優しい声が返ってきた。

「なんかあったりしたら、また会えるよね?」

「うん、きっとね。知らずに同じようなことしてたほどだもん」

「そうだよね」

声が震えるのを抑えながら、大きく何度も頷いた。

「じゃあ……また」

少しして「あっ」と声を出した大翔に、「なに?」と返す。

「……涙。涙に逢うまで、さようなら」

大翔らしいのかそうでないのかといったその言葉に、「かっこいいこと言うじゃねえか」と少し前の自分を出した。

「じゃあね」と小さく手を振る彼に、「涙に逢うまでね」と笑い返す。

大翔はかわいらしい笑顔を残し、出入り口に向かって歩き出した。


「ありがとう」

滲む彼の後ろ姿を見つめ、震える声で呟いた。

楽しい時間と、今のわたしをありがとう。

大翔の背に「頑張れ」と二度続けると、頬に温かいものが伝った。