「そうだ。これ目立つ?」

わたしは言いながら、前髪を上げて左右に顔を向けた。

大翔から言葉が返ってこず、「目立つ?」ともう一度言って正面を向いた。

彼はわたしと目を合わせると、「美紗の顔初めて見たかも」と少し驚いたような顔で言った。

「あの違う、見てほしいのは顔じゃなくて耳」


専門学校を卒業した直後、就職活動をしないわたしは、同じ立場にいるなっちとともにピアスホールを開けた。

なっちは、わたしが経営する雑貨屋に勤めるつもりでいる。

わたしとともにそれほど苦労せずあの学校を卒業した彼女は決してわたしが救いたいような人ではないが、

まずは知り合いと始めた方がなにかといいだろうと思い、どうなるかわからないと言った上でこれからもよろしくと伝えた。

なっちは、みさっちの描いたあれが実現すれば絶対に成功すると言って頷いた。

本当にどうなるかわからないよと再度言うと、どうなっても構わないと彼女はもう一度頷いた。


学歴、年齢、国籍を問わないわたしの雑貨屋では、ピアスや染髪も自由にするつもりでいる。

一度はなっちと、上手くいった場合いろいろな世代の方が同じ場所で働くことになるため

ピアスや染髪が考えられないという年齢の人もいるのではないかという話になったのだが、

そのような人がピアスやイヤリングなども取り扱う店で働こうと思うだろうかという結論に至った。