涙に逢うまでさようなら

それからの春休み、わたしはやはり毎日大翔とともに過ごした。

刺繍は練習する度にわたしの指に傷を残す。

春休みの半分ほどを過ごす頃には、最初薄々感じていたものが確信に変わっていた。

わたしに向いているのは、間違いなく縫い物ではなく編み物だ。


学校へは、バスと自分の足を使って三十分ほど掛けて通っている。

バスでの移動がおよそ二十分、学校の最寄りのバス停から徒歩十分ほどだ。

昼食は、なっち、みさっちと呼び合う仲になった和風美人の友人と近くのコンビニに買いに行っている。


車窓から見える空は、こちらには少し前に新たな学校生活が始まったというのに厚い雲を抱えていた。

見慣れた景色を眺めているうちに最寄りのバス停へ着いた。

バスを降りると、少し湿った生ぬるい風が前髪を揺らした。


実に六年振りとなった学生生活は、思っていたより楽しいものだった。

学校の敷地に入ると、和風美人な友人、なっちが駐車場の方からこちらへ駆け寄ってきた。

「みさっちおはよう」と笑顔を見せる。

彼女はわたしの学生生活が六年振りであることを知らない。

話すようになってから間もなく尋ねられた出身高校は、特別高いというわけでもなかった彼女と同じくらいの偏差値という設定の、架空の学校を曖昧に伝えた。

彼女の出身高校からはかなり遠い場所にある設定にしたため、その話をしたときは「そこって頭いいの?」と訊かれた。

そこで、咄嗟に「なっちのところと同じくらい」と返したのだ。