涙に逢うまでさようなら

「ていうか、受けたとして次回も落ちたらどうしよう」

「次回落ちたら、わたし卒業しちゃうよ?」

大翔はため息をついた。

いつかの彼のように幸せが逃げてしまうじゃないかと言うか迷ったが、この状況でため息をつかない方が強すぎる。

「いいなあ、美紗は。専門学校って? 留年とかないの?」

「あるよ。ちょうど、少し前に進級を賭けた学校側との闘いが行われたところ。ただ、わたしは優秀だから? ちょちょっと進級してやったけどね」

「そういえば、専門学校の入試って面接なんだよね?」

「そうだよ。なにを訊かれたかは慌ただしい日常に忘れさせられてしまったが、将来の夢を語ったのを覚えているような気がする。

まあ、わたしからすれば専門学校への入学なんて余裕のよっちゃんよ」

言いながら、人差し指で前髪を払った。

「将来の夢って?」と大翔の声が返ってくる。

「前に言ったじゃないか。専門学校を卒業し、自営業を成功させることよ。

ただ、本店を建てるのはここじゃだめ。もっと栄えたところでないと。いくつか市をまたぐか、お隣の県さんにお邪魔するつもり。

そしてその栄えた舞台で、美紗ちゃんワールドフルオープンの本店をぶち建てるのよ。

で、その店が活動を始めたらもうこっちのもん。美人女社長であるこのわたくし、フジシーロ美紗に入ってくる入ってくる金、金、金」

ぐへへと笑いをこぼすと、大翔は「楽観的ですな」という一言で片付けた。

「楽観的ってなんか嫌だ。ポジティブシンキングと言ってくださる?」

右手の親指を除く四本の指先で胸の上に触れて語ると、素晴らしい景色が頭に浮かんだ。

「ああそうだ、もしもいい就職先がなかったら、わたくしの店に来ても構わなくてよ?」

おほほと笑いを続けると、先ほどの大翔の言葉を思い出した。