涙に逢うまでさようなら

相原家の前で「医者様モードの美紗様お見え」と送信すると、「読込中…」のティーシャツに茶色いスウェットパンツという姿の大翔が現れた。

「まだ読み込めないか」と真面目に言うと、大翔は自身の着ている服を見て「変に現状と一致してる」と笑った。


部屋の様子は、前回と同じだった。

大翔の動きもそうだった。

ベッドに座り、そのまま後ろへ倒れる。

「今日は去年のあの日か」

わたしが言うと、大翔は小さく笑った。

はあ、とため息にも似た息を続ける。

「なんか、もういいかなあ。俺も資格で固めようかな……」

そんなの大翔のやりたいこととは違うじゃないかと並べそうになった声を飲み込む。

息を吸い込み、ふざけた声を出す喉を作った。

「大馬鹿者め。諦めるのか? 貴様の夢は、兄貴や家族を見返すことなんだろ?

兄貴よりいい大学に行って、兄貴よりいいところに就職する。

それが貴様の夢だったろ? 四の五の言わず、もういっちょ受けてみやがれってんだ」

素からはかけ離れた熱血キャラを演じると、大翔は静かに笑った。

ゆっくりと起き上がる。

「我が家は、おたく藤城家と違って金が有り余っているわけじゃないんだよ」

わたしは大翔から目を逸らした。

そう言われてしまえば返す言葉はなかった。

自分の家が特別裕福であると思っているわけではない。

大学の受験に金がかかるのは事実だった。