涙に逢うまでさようなら

「先に言う、不快にさせたら謝る。なににそんな緊張するの?」

大翔は小さく笑い、「かっこいいなあ」と呟いた。

「やっぱり美紗、緊張しないタイプなんだ?」

「それはそれで問題なんじゃないかというほどにね」

「こっちとしては羨ましい限りだよ」

「で、なににそんな緊張するの?」

わからない、と大翔は首を振った。

「落ちること自体を恐れているのか、落ちることが兄に負けたことを表すとでも思っているのか……」

そうか、と返し、少し頭を働かせた。

「じゃあ、面倒だと思いながら試験に挑んでみたら? なんでこの俺様がこんなことをしなければならないのだくらいの気で。

それか、もうどうでもいいと思いながら受けるか。そうすれば自然と気が楽になる……んじゃないかな」

「なるほどねえ……」

大翔は一度目を逸らし、すぐに視線を戻した。

「次は受かるかな?」

「受かると思うよ」

わたしが頷くと、大翔は勉強机の書籍に目をやり、「どんなふうに勉強するかなあ」と気怠げに言った。

「過去問とか?」

言った直後、わたしは「あっ」と声を出した。

「それか、あの大学へ入学するための本を買ってみるとか。わたし、見たことあるよ? あの大学の入試の傾向とかなんとか、よくわかんないけど、まとめた本」

わたしの曖昧な情報に、大翔は「それいいね」と頷いた。