涙に逢うまでさようなら

いつかのように「美紗様がお見えだ」と相原家の前で送信すると、少しして玄関が開けられた。

豆腐ティーシャツに灰色のスウェットという姿の大翔が現れる。

「元気か豆腐?」と思い切り茶化す。

「超元気だし」とふてくされた子供のように言うと、大翔は頼りない笑みを浮かべた。


部屋の中心では、テーブルの上にたたまれたノートパソコンが置いてあった。

「俺予知能力あるかも」と言いながら、大翔はベッドに座り、両腕を広げて後ろに倒れた。

「次も無理かなあ」と頼りなく呟く。

素直に発しそうになった同情の言葉を飲み込み、「ばっきゃろう」とふざけた声を発する。

「諦めるな、受験は何度だってできるんだ。次回は受かるかもしれないじゃないか」

ふざけた声のまま、熱血キャラのような口調で言葉を並べる。

大翔は短く息を吐いた。

「美紗はいいよ? 一発で受かったから」

「受かったって言っても、高校生の続きみたいな子供に威圧感満載で接するおじさんとの会話だよ? 特別求められるものなんてない」

言いながら、大翔の前六十センチメートル辺りにあぐらをかく。

ふと目をやった勉強机には、大量の書籍が積まれていた。

あれほどの情報を叩き込んでなぜ落ちたのだろうと考えが浮かぶ。

「もっとリラックスして挑めばよかったのに」

寝転ぶ大翔に視線を戻して言った。

大翔はゆっくりと起き上がる。

「リラックスとか大丈夫とか、落ち着けようとすればするほど逆効果だった」

「そうか……」

わたしには全くわからない悩みだと思った。