涙に逢うまでさようなら

「じゃあ、好きな時間は?」

ボールを投げたあと、大翔は「なにかをしてるときとか、そういう意味」と付け加えた。

大翔といる時間、と投げ返そうとしたが、誤解を生みかねないという考えがよぎり、右手から力が抜けた。

最終的に、「寝てるとき」と返した。

それが、「美紗といる時間」と返ってきた。

少し嬉しかったが、それを伝えることはできなかった。

「好きな場所、特別な場所」

言いながら返すと、「上のベンチ」と返ってきた。

「同じく、上のベンチ」と投げ返したが、「なんて?」と聞き返された。

もうどうとでも受け取りやがれと思い、先ほどの言葉を叫んだ。


「最近再確認したこと」

質問とボールを受け取り、「幸せとはありきたりな日々のことであり、理由など必要ないということ」と投げ返す。

大翔からは、「世の中なにが起こるかわからないということ」と返ってきた。