涙に逢うまでさようなら

「今一番やりたいことは?」

「家族を見返す」

軽く投げたボールが、大翔からは力強く返ってきた。

自分で質問を作っておきながら、答えに困った。

今最もやりたいこと――。

「専門学校卒業してからやりたいことでもいい?」

叫ぶように確認すると、大翔は「全然おっけー」と言いながら両手を大きく振った。

乾いた冷たい風が吹き、体に力が入るのを感じながら、わたしはグローブを外し、自分の左手首を飾る黒と金のブレスレットを見た。

風が落ち着くと、アジャスターの先についているエムが激しく揺れる。

「どうしたあ?」という大翔の声を聞きながら、わたしはグローブをはめ直し、ボールを握る右手に力を込めた。

「雑貨屋を経営すること」

叫ぶように言いながら、全力でボールを投げた。

大翔がそれを受け取る音が響く。

少しの沈黙のあと、「好きな食べ物は?」という声とともにボールが返ってきた。

軽く投げられたそれを受け取り、「難しいな」と漏らす。

少し考えた末、「麺類」とボールを返した。

「俺はさくらんぼ」とボールが返ってくる。

麺類とさくらんぼ逆じゃないかと思いつつ、「好きな飲み物は?」とボールを返す。

「緑茶」と返ってきたそれを、「水と茶全般」と投げ返す。