涙に逢うまでさようなら

「いくぞ」と続け、レシーブでボールを送ると、大翔は落ちる寸前のところから打ち返してきた。

なんとなくだが、彼の運動神経が悪いことがわかった。

軽い気持ちで続けるべきだなと思ったが、大翔のような相手にこそ本気を出したくなってしまうものだ。

低い位置に返ってきたボールを蹴り上げ、それに回し蹴りを食らわせた。

大翔は上手にそれを受け取る。


「なに受け取ってんだ。わたしたちはバッテリーを組んでるんじゃないんだよ」

「バレー版キャッチボールって言ったでしょ? 『キャッチボール』なんだからキャッチしなくてはと思って」

「ルールを聞いていなかったのか。このボールを『返し合う』のだと言ったろう」

わたしが言うと、大翔は「すみませんでした」と小さく言い、強めのアタックでボールを地面に叩きつけた。

「なにしてんのさ。寒いんだからこっちの体も動かさせてよ」

わたしの言葉のあと、大翔は再びボールを地面に叩きつけた。

「なにを一人で温まってるの。ハリーをアップしてくれ」

ほらほらと急かすと、今度は足でボールを転がしてきた。

わたしは右足でボールをすくい上げるようにしたあと、一度高く蹴り上げ、それをレシーブで返した。左の手首で大文字のエムが揺れる。

大翔も一球目よりはよくなった球を返してきた。