涙に逢うまでさようなら

勉強再開からしばらくして、わたしたちは息抜きのため公園を訪れた。

野球ボールとグローブ、バレーボールを持ってきた。

ここへくるまでに誰ともすれ違わなかったが、この公園内で人がいないというイメージの場所へきた。

芝生のグラウンドがある方から坂を下ったところにある、土が広がる校庭のような場所だ。

ナイロン製の藤色の袋からバレーボールを取り出し、自分の運動のスイッチを入れようとボール回しをやると、大翔は「器用だね」と言ってわたしの手元を見つめる。

「こう見えて昔々、体育だけは得意だったんだとさ」

「昔話?」

「大昔話だ」

残念だけど歴史は得意じゃないよ、と言う大翔の言葉を無視し、ボールを脇に抱えて「あれやろうぜ」と提案する。

「バレー版キャッチボール」

わたしが言うと、大翔は最後に疑問符をつけて繰り返した。

「主にレシーブとかトスとか、バレーボール競技で使う動きで、このボールを返し合うの」

「バレー版キャッチボールって名前は初めて聞いたけど、いいよ。で、ルールの説明中にあった『主に』ってなに?」

「必要に応じて足も使っていいことにする」

蹴りが必要になる場面ってどんなものだと呟く大翔を無視し、「はい始め」と声を張る。

前方を指で示し、「ピッピッ」と繰り返すと、大翔は小走りでわたしから離れた。

「この辺?」と聞こえてきた彼の声に、「いいだろう」と返す。