涙に逢うまでさようなら

気がつけばグラウンドから人の姿は消え、辺りの地面は影すら映さなくなっていた。

帰宅後はシャワーを浴び、タオルについているフードを被ってカップ麺をすすり、すぐに眠りに就いた。


わたしは目を覚ますと、すぐに部屋着の上に茶色のパーカーを着た。

チャックを閉めながら、このパーカーを着るのはどれくらい振りだろうと考えた。

答えが出ないまま携帯と小銭入れをポケットに入れ、鍵を握って部屋を出る。


家を出て直行した先の公園に、人の気配はほとんどなかった。

視線の数メートル先で、小さな鳥がなにかを察知したように飛び立った。

先ほどまでいた場所の真上にある木の枝にとまっている。

鳥がいた辺りには、ポテトチップスと思しき小さな欠片が散らばっていた。

食べるものが見つかってよかったな、と心の中で言いながら、木の枝で安全を待つ鳥を見上げた。


今日もベンチで過ごそうかと考えながら歩いていると、前方に人の姿を見つけた。

せっかく貸し切りに近い状態を満喫しようと思ったのにと心の中で漏らし、実際には静かにため息を落とす。

開始数分で現実を見てしまったじゃないか。

フードを深く被り直し、足元を眺めて前方にいた人物とすれ違う。

すれ違いが済んで間もなく、相手の足音が止まった。

なにもないところでなぜ足を止めるのだと思い自分の歩みを速めると、後ろから確認するように名前を呼ばれた。

懐かしい声だった。

どきりと跳ねた心臓とともに振り返ると、数メートル先に見覚えのある笑顔があった。