涙に逢うまでさようなら

気がつくと、体は左側を下にして倒れていた。

上体を起こし、何気なく太ももに右手をつくと、太ももに痛みを感じた。

どこかにぶつけたような痛みだ。

履いている色の薄いジーンズを半分ほど脱ぐと、右の太ももには拳ほどの大きさの痣があった。

そこに触れる右手の甲を隠す袖は、黒いパーカーのものだった。

少し記憶を辿ると、右脚に痣があることにも、自分がパーカーを着てジーンズを履いていることにも納得できた。

昨日は確か、ともに勉強していた大翔に「やりたいことを考えてみる」などと言って早めに帰宅したのだ。

それからというもの、激しい嫌悪感に襲われ、狂ったように太ももを殴ったのだ。

そして、気が済んだのか単に疲れたのか、眠りに就いたのだろう。

なにをしているのだと思い髪の毛を掻き乱し、トートバッグから取り出した清涼菓子の容器を振り、出てきた分を全て口に放った。