涙に逢うまでさようなら

「美紗は、もっと自分に自信持っていいと思うよ? 俺なんてずば抜けてるのは悪いところだけなのに普通にしてるんだから」

「君には集中力があるだろう」

「集中力ねえ……。別にあるわけじゃないよ。前にも似たようなことを言ったけど、これは俺にとって唯一の生きる道なんだ。

これをやらなければ、死ぬのは時間の問題。親が死ねば間もなく俺にその番がやってくる。仕事も収入もないからね。兄がともに生きてくれるとは考えられない」

そんな俺に比べ、と大翔は続けた。

「美紗には余裕があるんだよ。美紗自身は全くないように感じてるかもしれないけど、俺と比べたら全然ある。俺より、作る道の数も行動力もあるからね。

だから、絶対にやらなくてはならないというわけではない勉強が面倒に感じるんだよ。

絶対にやらなくてはならないというわけではなくても、やりたければ面倒には感じないかもしれない。

だけど美紗にとっての勉強はそうじゃない。やらなくてもいいやりたくないことなんて面倒に決まってる」

他にやりたいことがあるならそれをやった方がいい、と大翔は締めた。

「やりたいこと……」

わたしが呟くと、「自営業やるのが夢なんでしょ?」と大翔は優しく言った。

「経営者として役に立ちそうな資格を取るために専門学校へ行くつもりだったんでしょ? 高認も無駄にならないし。

だけどもし高認を受けないなら、今から資格取得の勉強をすればいいじゃない。それは好きなことなんだし、こっちより楽しいんじゃない? 確かにこんな勉強、なんら面白くないよ。俺も好きにはなれない。

面接で『大学で学んだことは?』とか言われたら困るんだろうね。まさか『家族を見返す快感』とか危険人物感満載の本音を言うわけにもいかないし」

大翔の言葉を聞きながら、わたしは教科書やノートをトートバッグへしまった。

肩にトートバッグを掛け、視線を向けた先の大翔はなにか訊きたげな顔をしていた。

「少しいろいろ考えてみる」と返し、彼の笑顔での頷きに口角を上げ返した。