涙に逢うまでさようなら

その日のページは、やたら彩り豊かなものになった。

それに似たページは、その後も十ページほど続いた。

そして十一ページ目を使う頃、わたしは完全に勉強のやる気を失せていた。

忘れかけていた、なぜこんなことをしなければならないのだろうかという気持ちが湧いてきたのだ。

シャーペンを握るも、焦燥感にも似た気持ちが連れてくるざわつきに包まれる。

唇を強く噛み、不規則な呼吸を繰り返す。

両方の踵を貧乏ゆすりのように上下に動かし、空いている左手は強く握りしめ、爪で手のひらに刺激を与えた。

その状態でしばらくすると、ざわつきも焦燥感も消えた。

呼吸の速さも一定のものに変わる。

大翔のノートが視界の端に映る辺りを見つめていると、今度はなんとも言えない孤立感に襲われた。

これも久しく感じていないものだった。

まずいと思い顔を上げ、教科書の文字を辿る大翔を見るも、彼が自分の友人であることが不思議に感じられた。

大翔から目を逸らし、周りの本棚をひたすら視界に入れた。

しかし、それらも全て初めて見るもののように感じられた。

聞いたことのある声が名前を呼ぶ。

その声は、水中に潜っているときのようにこもっていながらも、不自然なほどに大きく聞こえた。

その声にさらに何度か名前を呼ばれ、ようやく今いる場所も、自分を呼んでいた声もその主のことも理解できた。

小さく大翔の名を呼ぶ。

「美紗。大丈夫?」

「うん……大丈夫」

先ほどの感覚の余韻のようなものを感じつつ頷くと、大翔は心配げな表情を作った。