涙に逢うまでさようなら

「ところで、大翔はいつも何時頃に起きてるの?」

わたしはノートの隅に少女の絵を描きながら言った。

思ったより上手く描けている。

ショートボブの、白いワンピースを着て麦わら帽子を被った少女の横姿を描くつもりでシャーペンを走らせる。

「いつもは……八時とか九時かな」

「まじかよ」とほとんど無意識のうちに発し、「早朝じゃねえか」と続ける。

「早朝ではまったくないでしょ」と笑いの混じった大翔の声が返ってくる。

「わたしからしたら早朝だ。わたしの朝は十二時なのだから」

「その時間はね、世間一般的には昼と呼ぶんだよ」

「そうなのか。では、中学生であったわたしが当時朝食として摂っていた食事は……」

「皆その頃には昼食を摂っている。それがその日の二食目か一食目かは人それぞれだろうけどね」

「そうか……。ジェネレーションギャップとでも言うのだろうかね、これを」

「なんとなくだけど、俺は違うと思う」

「そうか……」

ははっ、と苦笑を続けた頃、少女の絵が完成した。

わたしのような人間が描いたとは思えないほど素敵な笑顔を浮かべている。

なんとなく物足りない気がして、見えていない設定だったために描かなかった右腕を描き、

手にはストロー式のシャボン玉の吹き具を持たせ、一度消した口にはその細い方を咥えさせた。

棒の先に三つほどのシャボン玉を描き、少女の周りには彼女と同じくらいの高さのひまわりを数輪描いた。

我ながらなかなかの出来だ。