涙に逢うまでさようなら

眠りについてから目が覚めるまでは早かった。

冷房が室温を保つ音を聞きながらため息をついた。

顔を右に向ければ、向かい側の壁にトートバッグが立て掛けられているのが見える。

めんどくせえ、と心の中で呟き、再びため息をつく。

大翔がそばにいたら、昨日のように幸せが逃げてしまうと言うのだろうか。

いっそなにか理由をつけてさぼろうかとも考えたが、一度そうすれば二度と勉強を再開することはない気がした。

わたしがなにもしない日々を過ごしている間に大翔は高認を受け、大学へ行くということは安易に想像できた。

同じような状況に生きる大翔において行かれたら、わたしは恐らく投げやりな気でこれからを過ごすことになる。

そして営業者になるという夢を叶えぬまま、この世に別れを告げる――。

そういった人生を送りたいわけではない。

自力で資格を取得するという道もあるが、相原大翔という人間に出逢ったわたしに一人で夢を追うことができるとは思えない。


わたしは目元に腕を載せ、ふっと笑った。

「逃れられないのか……」

自分にもはっきりとは聞こえないような声で呟くと、腕をおろし、ゆっくりと上体を起こした。