涙に逢うまでさようなら

気がつくと、ノートに文字を綴る、かりかりという音が聞こえていた。

ゆっくりと体を起こせば、自分が眠ってしまっていたことはなんとなくわかった。

眠るつもりはないなどと言葉に出さなくてよかったと思った。

真面目に手を動かす大翔を眺めていると、ふと顔を上げた彼と目が合い、「おはよう」と笑顔を見せられた。

正解も不正解も見つからず、「おはよう」と返しておく。

「……あの、わたしどれだけ寝てた?」

「どうだろう……四時間くらいかな?」

「えっ……」

パーカーのポケットから携帯を取り出し、時間を確認する。

ロック画面には、一時と表示された。


「あんたまじでぶっ飛ばすよ?」

「怖いことを言うんじゃない。冗談でなくなってくるかもしれないじゃないか」

大翔の声に「最初から冗談でねえよ」と返し、教科書とノートを机に並べた。

「やるの?」と言う大翔に「やるよ」と返す。

「大翔と同じ日に受験するのが目標だからね」

あまり達成できる気がしていないということは心の中で静かに続け、教科書とノートを開き、シャーペンを握った。