涙に逢うまでさようなら

ぼうっとしていると、「はい」という声とともにペットボトルのスポーツドリンクが視界に入ってきた。

顔を上げれば、大翔がそれを差し出していた。

「はい?」

「プレゼント」

真夏日に走ったら倒れる、と続け、大翔はペットボトルをわたしの前に置いた。

少しの間置かれたペットボトルを眺め、はっとした。

「いくら?」

尋ねながらトートバッグを漁ると、大翔は「いいよいいよ」と手を振った。

「……ありがとう、なにからなにまで」

大翔は小さく噴き出し、「今日は休んだ方がいいかもね」と言った。

「どういう意味よ?」

「美紗がそんなことを、それも繰り返し言うなんて、俺が美紗に憧れの感情を抱くよりおかしい」

「なにあんた、ぶっ飛ばされたいの?」

「いやいやそんな。暴力はよくないよ」

両手を振り困ったような笑みを浮かべる大翔にふっと笑い返し、机に伏せた。

「おやすみ」と優しい声が聞こえる。

別に眠るつもりはないが、わざわざ口には出さなかった。