涙に逢うまでさようなら

目を覚ましてすぐに着替えた。

トートバッグを肩に掛け、いつもの三つをポケットに入れて部屋を出る。

階段を下りながらイヤホンを装着し、パーカーのフードを被って音楽を再生した。


玄関で靴を履いていると、少し後ろのリビングの扉が開けられた。

心臓は一度痛みを感じるほどに跳ね、あとはばくばくと騒いだ。

呼吸もそれについていくのに気づきながら、一度動きを止めた、一瞬で温度を失った手で素早く靴紐を結び、玄関を出た。

普段図書館へ向かうのとは違う道をひたすら走る。

小学生の頃は走りにだけは自信があったが、今回は生きた心地もせず、走っているときの気持ちよさも感じなかった。


リビングから出てきただけの雄輔から逃げるようにして、図書館まで走りきった。

なんとか自動販売機の隣まで歩き、そこにしゃがむ。

右耳にだけ残っていたイヤホンを外し、プレーヤーと一緒にトートバッグへ入れる。

呼吸を落ち着けながら上を向けば、濡れた首を汗が伝った。

痛む胸に拳を当てる。

直後、「あれ?」と声が聞こえた。