涙に逢うまでさようなら

わたしは再びため息をつき、顔を上げた。

ぽかんとしたような大翔の顔が視界に現れる。

「むしろよく飽きないわね」

「俺は……ね、勉強することを望んでたから」

「はいはい。羨ましいですわ」

わたしはため息のように言った。

大翔は苦笑すると、一度シャーペンを回し、勉強の世界へ戻った。

「美紗はいいじゃん。勉強以外にも方法が思いついてるんだから。

俺は、勉強に飽きないわけでも、特別勉強が好きなわけでもない。それ以外にないだけなんだよ、ここから這い上がる方法が」

わたしはため息をついた。

またそれかよと思った。

「休んでたときに言ったろう。頭は柔らかく保っておけと。わたしに憧れてるくらいなら、自分の居場所など自分で作りゃいいじゃん」

「俺がそうできるほどの勇気と行動力を持った人間に見える?」

大翔はシャーペンを走らせたまま言った。

「人にどう見えるかなんて関係ないでしょ。大翔あれでしょ、他人に無理だと言われたら諦めるタイプでしょ」

「だったらもう勉強なんてしてない。この状況から兄よりいい大学へ行くことが不可能であることなど、家族に執拗なまでに語られた」

「ああ、そうか。それで追い込みすぎたんだもんね」

大翔はシャーペンを走らせたまま苦笑した。

わたしは「飲み物買ってくる」と残し、席を立った。