「で、なに? 男子高校生の年齢に当たる自分は、

彼女できない体質であるために彼女ができず、それを悩みながら彼女がほしいと願っているというのか?」

「全部混ぜてきた」と笑う大翔の方へ体を向ける。

携帯を床に置き、空いた右手で大翔の腹部に触れる。

そして喉を締めるように力を入れ、声を発する。

「痛いの痛いの飛んでいけえっ」

不自然ながらも女性らしい声色で言葉を並べると、笑顔を付け加えた。

「どうしたの?」と戸惑ったような声が返ってくる。

わたしは表情筋と同時に喉からも力を抜いた。

「とでも言ってほしいんじゃないの? それか、とでも言ってくれる人がほしいってことでしょ?」

「いやあ……そうだったんだけど……」

「なによ。願いが叶ってよかったじゃない」

「なんか……願いが叶った瞬間のはずなのに、昨夜より死が近くに感じられた瞬間だった……」

わたしは舌打ちをすると、人差し指で大翔の腹を強く突いた。

彼は短いうめき声とともに両脚と上半身を上げると、間もなく腹を抱えて丸くなった。


「今の絶対ただの指じゃないよね?」

ところどころ震えた声で並べられた大翔の言葉に、わたしは右手の指を確認した。

「あらごめん、ちょっと爪伸びてた」

笑顔を見せると、大翔は「鬼だ……」と呟いた。

丸まったまま、「死ぬかと思った」と続ける。