母親と兄が自室に入る音で冷静になった。

壁掛けの時計に目をやる。

二十一時三十分。

時間からして、父親はまだリビングにいるはずだ。

わたしは一階から聞こえる音に注意した。


父親は二十三時半頃に自室へ行った。

わたしは、それを確認してから三十分ほど経った頃に部屋を出た。

音を立てないことだけに注意し、階段を下りる。


リビングでは、微かに入る廊下の光で父親の財布を探した。

いつもと違う場所にあったため少し時間が掛かったが、無事に発見した。

中から紙幣を二枚頂戴する。

財布のチャックを閉めて元の場所に戻し、向きを微調整した。


リビングを出て、再び音を立てないことだけに注意して部屋へ向かう。