今までに感じたことのない黒い感情

怒りと悲しみで雨なんて気にならなかった。






坂巻音葉(サカマキオトハ)は今年で24になる。

ルックスはいいとはいえないが、

悪いわけでもない。

音葉には5年ほど付き合っている彼氏がいた。

なぜ過去形かというと,

さきほど振られたからだ。


音葉は今日,「大事な話がある。」と

彼氏である広瀬海斗(ヒロセカイト)に

呼び出されていた。


付き合って5年…もうそろそろ

結婚を考えてもいい時期だと音葉は

思っていた。

だから,今日の“大事な話”の内容を

プロポーズだと思い込んでいたのだ。


普段は着ない可愛らしいワンピースに,

いつもは巻かない髪も今日はクルンッと巻いた。

苦手なメイクも頑張った。


音葉は胸をときめかせながら,

待ち合わせのレストランに向かった。

そのレストランは,外観が可愛らしく

内装も音葉好みだった。

“今日,私はここでプロポーズされる”

そう思うと音葉の胸は熱くなった。


ウェイトレスに席まで案内してもらうと、

海斗………と知らない女がいた。


「あ、やっと来た。」

海斗は平然と音葉に笑顔を向ける。

「え~この女が海斗の元カノ??
よく、こんなのと付き合えたね〜」