冷酷な王さまは愛し方を知らない



「こんな風に、穏やかに過ごしたのは、王になって初めてかも知らん」

「え…?」

「お前の側は、なんだかやけに落ち着くな」



それはとても穏やかな表情で。
そんなお顔もされるのだと驚いたほど。
私はすっかりそんなアルさまに見惚れてしまって言葉を失う。



「なにが欲しい。なにをやればお前が手に入るのだ?」

「え…?」

「金をひけらかしてもお前はいい顔をしなかった。ならば何をやればいいのだ」



まるで、ただ何気なく呟く疑問のように。
そう言われ、私は何と答えればよいのだろう。

私が手に入る?
手に入れたいというのだろうか。

それはただ、手に入らない私が物珍しいだけでは。
きっと、王さまが欲しいと言えば、何でも手に入るだろう。
それは女の人の心であっても。
他の候補者の方のように。



「お前は、王妃の座を欲しがらない」

「…私は、なにも欲しくはありません。なにかを得るために必要なのは必ずしも物やお金じゃありません」

「俺にはそれがわからない」